2019年7月9日火曜日

持続可能なタンパク質のお味

豆腐の食べ比べ

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先日知人宅で豆腐の食べ比べのイベントをやりました。
豆腐は一般的に味がほとんどない食べ物と思うでしょう。

その味のないものでどうやって味比べをするのか疑問に思うかもしれません。


tofu_comparison
食べ比べ用に並べられた豆腐

ですが豆腐にはちゃんと味があります!

味の見極めは難しいと思われましたが、今回の食べ比べではっきりとその結果が出ました。





食べ比べ方法



絹豆腐と木綿豆腐でそれぞれ8種類のサンプルを用意し、イベントに参加した8人が試食するというやり方で行われました。


サンプルの豆腐
スーパーマーケット、量販店、街の豆腐屋さんからの豆腐が用意されました


この8種類のサンプルは生産者や価格は隠された状態で置かれているので、参加者は豆腐について事前情報が何もないため自分の舌で評価するよりありません。



予め配布された評価用シートに最も美味しいと思った豆腐を絹と木綿でそれぞれ上位3つ選んでもらいました。



全ての参加者が評価をつけ終わった後で、集計結果の公開となりました。



その結果



上位3種の豆腐は参加者それぞれの好みの違いによりばらけることになると予想されました。


しかし、結果は驚くほど統一されたものとなりました。


参加者全員が一番美味しいと評価した豆腐、それは池袋にある小さな豆腐店の大桃豆腐からのものでした。
※かつてスーが豆腐職人を目指して修行していた店でもあります


この大桃豆腐の豆腐が、絹豆腐の部門の中で参加者8名が全員もっとも美味しいと回答し、木綿豆腐部門でも、8名のうち7名がもっとも美味しいと回答したのです。



ポイントとしては少し差があったものの、2番目に美味しいと評価されたのがつくば市にある稲本豆腐店でした。

稲本豆腐店が木綿豆腐の部門で1名からもっとも美味しいという評価を得ており、そして2番目、3番目においしいという回答をいくつか得ました。

一方でその他の豆腐の評価(スコア)は低いものでした。

お断りしておきますが今回のイベントは大桃さんや稲本さんには一切告知しておらず、これら豆腐屋さんの広告宣伝の意図は全くありません。



この味の違いはどこからくるのか



味の違いを言葉で説明するのは大変ですが、参会者が美味しいと評した豆腐は、ほんのりと自然の甘さ、そしてクリームのような滑らかさがその味に備わっていました。

醤油や塩をかけなければ、ちゃんと豆腐の持つ味を舌で感じることができるのです。


調味料をつけない豆腐は美味しいものです。



食べ物を音楽に例えてみます。
ハンバーガーはまるで大音量スピーカーから溢れ出るポップソングだが、その調子は最後まで続かず結局飽きてしまいます。

それに比べると、豆腐は3つのピアノの音が永遠に繰り返されているようなものです。その単調さゆえに、メロディーを入れずに聞くのが大変なのです。

今回の最も美味しかった豆腐は、静かに流れる美しいピアノ協奏曲のようでした。
よく聞いていないと見逃してしまうが、注意深く聞いていれば、それを鑑賞しいつまでも楽しむことができるのです。

言うまでもありませんが、一番確かな方法は自分で食べて確かめてみることですね。

味の違いの全てはその原材料の選択によります。
つまり、大豆、にがり、水。さらにこれらをどうやって豆腐にするか、その工程の中で味が決まります。


多種ある大豆について専門家のふりをして語ることもできますが、それはキリがないのでやめますがここでは1つだけ書いておきます。

それは、大桃豆腐と稲本豆腐はともに国産の大豆と天然にがりを使用しているということです。これが美味しい豆腐を作ることの1つの重要な要素であることは明らかです。

そして当然ながら、美味しさを引き出すための技、経験が要求されます。



豆腐の食べ比べやりませんか!?



8人の参加者は少し規模としては小さかったと思います。

同じような結果が繰り返されるかどうかを知るためにも、この実験はまたやってみたいと思っています。

つくば周辺にお住いの方で、ご興味のある方はこの記事に投稿いただくかFacebookなどからご連絡ください。


また豆腐の食べ比べを楽しみにしています。



なんで豆腐の味が問題なの?



なぜそもそもこのイベントをやろうと思ったのか、そして豆腐の味が世界平和にどのような意味を持つのか、についてそろそろお伝えしなくてはいけないと感じてきました。

当然ながら、これはとても大きな話になります :D


豆腐と卵に共通点はないと思われるかもしれませんが、実際のことろ共通点はあります。



卵と豆腐は兄弟
卵と豆腐

卵と豆腐は少なくとも1つの共通しているものがあります。

それは、両者が素晴らしい持続可能なタンパク質という点です。

しかしそれには条件があります。
”持続可能”と呼ぶには、ある明確な条件をクリアしなくてはいけません。そしてこの条件は卵と豆腐で異なってきます。


持続可能となるには条件があります

豆腐の場合だと、その条件として、私はまず、それは美味しくなくてはいけない、ということを強調しておきます。



持続可能なタンパク質



もしまだこの持続可能なタンパク質を聞いたことがないという方、心配いりません。誰もないはずです。
私が最初に気づいたのが、先週インターネットで調べていた時です。

以下英文となりますが関連リンクです

There are initiatives like Protein Challenge 2040.
There is a book called Sustainable Protein Sources.
There is an extensive article called Sustainable Protein: Meeting Future Needs on the The European Food Information Council (EUFIC) website.


これらについて、私は何も知らないのにここ十年ほどの間、持続可能なタンパク質を探し求めていたようです。

平飼いの養鶏を始めたこと。豆腐屋で豆腐作りを学んだこと。思い返すと、これらは持続可能なタンパク質を求めていたからでした。


大桃豆腐店での修行時代(2013年 豊島区池袋)



最初の平飼い養鶏 (2011年 つくば市)


持続可能なタンパク質とは何か?



それは、みなさんご想像の通りです。

持続可能なタンパク質それは・・・

1)大量に生産が可能
2)環境にかかる負荷が低い
3)手頃な価格

そして4番目に私が追加したいのが楽しんで食べることができるです。


持続可能なタンパク質は、2050年に地球上の97億人、または2100年には108億人もの人々を支える全てのタンパク質の資源になるのです。さもなければ地球は破壊されてしまいます。


もしあなたに赤ちゃんがいたら、おそらく2100年まで生きるかもしれません。そして彼女には自分の孫がいることでしょう。彼らは紛れもなく、この108億人という人の中にカウントされているのです。

もしその時までに平等な社会があり、地球上の全ての人が、1日に健康を維持するために必要とされる60グラムのタンパク質を摂取すると仮定すると、それには6億4800万キログラムものタンパク質が1日で消費される計算になります。

これはタンパク質だけです。火星にでも行かない限り、私たちはこれだけの膨大なタンパク質を今この地球で手にしている資源だけで生み出さなくてはいけないのです。


タンパク質源として、伝統的には、肉、魚、卵、乳製品、大豆、豆、ナッツ、種、穀物、一部の野菜類(ブロッコリー、アスパラガス)という順に多く含まれています。

これらを生み出すのに必要なエネルギー、土地、水の量は変わってきます。また、生産過程で出るゴミの量も同じです。


植物由来の食物は大抵の場合、生産に必要な土地、水、エネルギーは動物性のそれよりも少なくなります。持続可能なタンパク質とは、より植物由来の食べ物へと食習慣をシフトするという意味でしばしば用いられます。それはベジタリアンやビーガンになる、という意味ではありません。

動物性のタンパク質では、持続可能なタンパク質の意味とは、様々な動物由来の食物による環境への影響を見極めること。そして、その中でより小さな環境負荷の選択(footprint) 例えばその一般的な食品として”卵”を、牛や豚より優先して選択し食べることが、より持続可能であるとして推奨されています。

例えば IME Global Food report (2013年)によると、1ヘクタールの土地で米や芋が年間で19〜22人分取れますが、同じ広さで羊や牛を飼育すると1人か2人分にしかなりません。

1キログラムの牛肉を生産するのに約15000リットル、1キログラムの豚肉を生産するのに約6000リットルの水が必要になります。


しかし、卵の場合なら1キログラム(卵1つあたり200リットル)で3000リットル、米の場合1キログラムで2500リットル、芋1キログラムの場合なら287リットルの水で済むのです。

また、飼育後の加工過程において、さらに大量の水が消費されることになります。
これは特に食肉の生産の場合に重要で、そこでは牛肉は野菜の約50倍もの水を消費します。(IME Global Food Report)


ケーススタディー The water footprint of soy milk and soy burger and equivalent animal products (2011) によると、150グラムの牛肉のハンバーガーを作るのに必要な水の量は、同量の大豆バーガーで必要となる量の15倍以上にもなると書いてあります。(牛肉が2350リットルに対して大豆が158リットル)

言い換えると、牛肉のハンバーガー1個分の水の量で、大豆バーガー15個が生産できてしまうということです。

エネルギー消費という点で見てみます。IME Global Food Reportを再度引用すると、1カロリーの食物を生産するには平均7〜10カロリーが必要とされています。しかし、それは植物である穀物の場合なら、3カロリー、牛肉生産の場合なら35カロリーと言った具合に作物により大きく変化します。



なぜ豆腐の味が重要なのか?


はじめに、豆腐は大豆からできています。乾燥した大豆には30〜40%のタンパク質が含まれています。そしてそれは全ての植物性タンパク質源の中でも、ほぼ完全なタンパク質であると言えます。(完全なタンパク質とは9つ全ての必須アミノ酸がバランスよく含まれています。これについてはまた次の機会に詳しく説明したいと思います。)

150グラムの木綿豆腐には9.9グラム、同じく150グラムの絹豆腐には、7.4グラムのタンパク質がそれぞれ含まれています。※150グラムの豆腐のサイズは、スーパーで売れられている一般的な豆腐パックの半分です。


それに加えて、豆腐にはミネラルやビタミンも含まれており、それでいて低カロリー、低コレステロールなのです。豆腐はとってもありがたい食べ物なんです。

ただし、あまり豆腐好きが多くないのも事実です。


言い換えると、豆腐は上で書いた持続可能なタンパク質の条件を見事に満たしている食べ物ということです。

持続可能なタンパク質の条件:

1)大量に生産が可能
2)環境にかかる負荷が低い
3)手頃な価格
4)楽しんで食べることができる味


ラーメンやハンバーガーほどには、豆腐を食べたくてしょうがないという人はほとんどいません。豆腐は誰かの”お気に入りの好物”になることはほとんどないです。

人はそれが好きでなければ(または無関心だったら)、食べることはしません。それではもったいない。


だからこそ私は、”美味しい”ということを、豆腐が持続可能なタンパク質となりうるための条件へ追加したわけです。


私たちの豆腐の食べ比べはこの実証実験だったと言えます。


最後にこのブログのタイトルとなっている ”持続可能なタンパク質のお味” についてお答えします。

持続可能なタンパク質の味は、実に美味しいです!






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