将棋盤を作って欲しい
私の中の将棋盤のイメージは四角く加工された木材に黒い線が入っているだけなので、難しくないだろうと思いました。
また、昔から自分も将棋は好きだったので、木工で好きな将棋盤が作れるならと思い、喜んで引き受けることにしました。
引き受けた後で、そういえば将棋盤の線はどうやって書くのだろうか・・・うーん、分からん。
完成した将棋盤 |
再利用に使ったカヤの木の碁盤
何の木で作ろうかと考えていたところ、昨年知人からカヤの木でできた碁盤をもらったことを思い出しました。
碁盤で使っていた木材であれば将棋でも使えるはず、というよりこれ以上の適材はないだろうと思い早速使うことにしました。
しかし、この碁盤よく見ると水に濡れたりしていたようで各所にひび割れがあることに気づきました。
少し外身を削ってみて中まで傷んでいないことを確認することにしました。
まずは輪切りに。クランプで挟み四隅からノコギリを入れることにしました。大きなノコギリがあれば良いのですが、小さくて短いノコギリしかないのでこうするより他ないです。
しかし、ノコギリの刃が短いため、どうしても木材の中心を切ることができません。
くさびを打つことにしました |
ノコギリを使う腕も相当くたびれてきたので、ノコギリで切ってできた隙間にくさびを打ち込み木材を割るという作戦に出ました。
なんとか割れたようです |
一応割れてくれました。
だいぶノコギリの刃がずれています |
ノコギリの入れ方が下手なせいで、切断面に大きな段差ができてしまいました。これを平面にしていくので、この段差が全て無駄になってしまいます。
あぁ、悲しいことに、自分のように技術がないと材料を無駄にしてしまうのです。
しかし、ひび割れはそれほど奥深く入っていないことが分かりました。このまま将棋盤として加工を進めることにしました。
罫線を引く
木材のカットが終わったら完成ではなく、将棋駒を並べるために罫線を引かなくてはいけません。
一番外枠の寸法は、縦364mm 横330mmでしたので、今回はそれを真似て同様の寸法で墨付けしました。
さて、どうやって線をどうするか。
その前に本物の将棋盤はどうやって描いているか調べてみました。
以下はYoutubeのリンクです。
太刀盛りというそうです。日本刀の刃先に漆を塗っておき、刃を下ろしながら線を引くという驚きの技です。
当然こんなことは真似できません。
ということで思いついたのが、木を焼いて焦がして線を描くというものです。
半田ごてでやってみました。
熱くなったこて先を木の表面に押し付けて焦げ目を作って線を描いていきます。
線はブレブレです |
フリーハンドで焦げ目をつけていったので、写真からは見えにくいかもしれませんが、線は相当ブレてます、笑。
こんな将棋盤では、プレイヤーは将棋に集中できないでしょう。
適切な焦げの濃さにならないので、何度もやり直しました。
失敗すると表面をカンナで削るので、だんだん板厚も薄くなってきました、笑。
やってるうちに半田ごての扱いも少しは慣れるのですが、手の力加減や、コテを動かすスピードにより、仕上がりが全然違ってきます。
同じクオリティで縦横20本の線を描くことは、不器用な自分には無理だということが分かり、このやり方は断念することに。
埋め木をして罫線を引く
父親が細い木を埋めてそれで罫線を描いてはどうか、と言いました。それには、盤面に正確な細い溝を掘ること、そしてそこに細く加工した板をはめ込むことが必要で、これらは大変そうな気がしましたが、他にアイディアもないのでその提案を受け入れることにしました。
ジグとトリマーを使って溝を掘りました。幅は2mm深さ3mm。
盤にジグを固定して、ジグのレールに沿ってトリマーを走らせていきます。
トリマーによる加工 |
縦線を掘っていきます。
表面に割れが出ないように |
加工はジグと盤の基準面がしっかりしていれば、正確に溝を掘ることができます。
堀った溝に黒檀の木を入れていきます。黒檀は幅2mm 364mm 高 3mm です。この精度での加工はできませんので、ネットで購入したものを使いました。
縦横に溝を掘り黒檀をはめ込んでいきます。この時、溝側に少し接着剤をつけておきました。
縦横に交差している部分の加工は、先に横溝を掘って埋め木した後で、その上から縦方向の溝を入れていきます。
縦溝ができたらそこへ黒檀を埋めていくと以下のようになります。
黒檀で描いた罫線 |
綺麗に仕上がりました。先ほどの半田コテとはえらい違いです。
塗装して仕上げ
塗装に使う塗料は、カヤの元からの色をできるだけ変えたくなかったので、オスモカラーのエキストラクリアーを使いました。
最初カヤの木に塗るとだいぶ色が変わりました。
よく塗料を吸います |
黒檀の黒とのコントラストがとても綺麗です。
塗装したばかりは赤っぽく色が出ます |
裏面にも塗装しておきます |
時間が経つと赤みが消えて薄い茶色に戻ります。
駒を置いてみました |
表面はサンダー仕上げです。#120、240、400といった感じで番手を利用しております。
依頼主のおばあちゃんに将棋盤を渡したところ、これで家で孫と将棋ができるということで、喜んでいただけました。
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