2018年6月25日月曜日

ニワトリ社会の最下位にいるヒーロー "アシ子"

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久しぶりのニワトリについての投稿となります。ファームについてのブログは最近かけていませんが、ファームは健在です。ニワトリやヤギたちも元気ですし、太陽光発電もちゃんと機能しています。


以前より会社での仕事が増えたことで、ニワトリやヤギたちと過ごす時間が減っていて、これはとても残念なことと思っています。なぜかというと、彼らをこっそりと観察することはとても楽しいことだからです。


今日はニワトリ社会の序列について書きます。このトピックについて退屈と思うことなかれ。それがいかに人間社会と似通っているか知ると驚くことと思います。



彼らの社会は、人間が "平等" や "人権" を発明する前から存在しているのです。事例として取り上げるのは、群れの中で最下位の序列に位置するアシ子についてです。




アシ子ちゃん
アシ子ちゃん

社会的序列が最下位ということは普通は良くないこと、悪いことです。しかし、私たちのファームではアシ子は私たちのお気に入りのニワトリであり、しかも特別な待遇を受けています。



私たちの哲学




"一羽ももれなく幸せに"


これが私のファームの哲学です。(もし私たちのファームが国家だったら、福祉の状況はフィンランドよりも優れていたかもしれません)



ニワトリ共和国
ニワトリ共和国

今は9羽のニワトリしかいないので(ヤギは6匹)、ニワトリの社会構造は簡単に見て取れます。


9羽のうちの8羽が雌鶏で1羽が雄鶏です。雄鶏の名前はジャスティンといい、群れのなかでもちょっとユニークなポジションにいますので、今回ニワトリの序列についての話はほとんど8羽の雌鶏についてです。


(雄鶏のジャスティンのポジションについては、低いとも高いとも言い難いです。というのも、ジャスティンは群れのリーダーとして振る舞いたいのかそうでないのかが、場面によってははっきりしないのです。ジャスティンは、他の雌鶏に混じって低いポジションにいるのが好きな一方で、私や他の小さな雌鶏や敵を攻撃するという心も半分持ち合わせているのです)


ジャスティン(中央)



序列の中で最上位のマルコと最下位のアシ子



雌鶏について紹介します。
群れの最上位にいるマルコです。



マルコちゃん

マルコは群れの中で最も綺麗なニワトリです。
とても美しい羽をまとっていて、それは序列の中で最上位であることの結果と思います。

餌の時間でも、マルコは他のニワトリたちに邪魔されることなく、餌箱から自分の好きな餌を選んで食べることができます。他のニワトリから突かれたりすることもありません。

このためマルコは最高の栄養を取ることができ、しかも他の誰にも傷つけられることがないのです。マルコの換羽(羽の生え替わり)はしていてもほとんど気がつかないくらいその羽は美しいものです。


だからマルコの羽が美しいことは偶然ではないのです。

ブログのトップを飾っている美しいニワトリこそ、実はこのマルコでした。



マルコちゃん
マルコちゃんと奥にいるヤギはとびちゃん


マルコちゃん
無表情のスマイル

私がファームで穴を掘ったり雑草を取っている時に、マルコは私に"お手伝い"として近寄ってきては、土から出てきた虫やミミズを食べてしまいます。虫やミミズは他のニワトリたちにとってみてもご馳走でみんな欲しがるものですが、マルコは最初に来て食べる特権を持っていて、他のニワトリは近くにいてチャンスをうかがっているだけです。


群れを支配しているにも拘わらず(または群れを支配しているからか)、マルコが他のニワトリを意味もなく攻撃するのを見たことがありません。推測するに、マルコは産まれながらにしてリーダーだったのでしょう。


マルコの下には、上位に雌鶏と下位の雌鶏があり、そして最下位にアシ子がいます。


ニワトリ社会
ニワトリ社会


アシ子は最下位です。ほとんどの社会組織では最下位は不運なポジションですが、私たちのファームでは、最下位のニワトリやヤギがいたら即座にVIP待遇の保護を受けることができます。



ただこれは以前からそうだったわけではなく、当初の私たちの哲学はニワトリの問題はニワトリ自身で解決させるというものでした。でもアシ子は私たちお互いにもっと良くできるということを教えてくれました。


アシ子が虐められ始めたのは6ヶ月前でした。きっかけは、アシ子が病気になり、片足を引きずって歩く様になってしまいました。その時から他のニワトリたちに目をつけられてしまいました。



多様性を嫌うニワトリ


ニワトリは多様性を嫌います(他の多くのヤギ、犬や人間と同じです)。ニワトリが自分のモットーを壁に書いたとすると、おそらくこうなるでしょう。


"あなたが私と同じでなければ、あなたは敵です" 


私たちは、アシ子が餌の時間に何度も他のニワトリから追い払われてしまうのを見ていて(通常は他のニワトリがいなくなったらまた餌のある場所に戻ってきます)、大抵の場合は何も理由がないのにやられているのです。

ただそれはそんなにひどくはありませんでした。

このファームは広いので、もし群れの中で虐められても十分に隠れる場所はあると思っていました。

集団で1羽に対して虐める(クチバシで突かれて死んでしまう)ようなことは、よそのギュウギュウに閉じ込めれストレスの溜まったケージ飼いのニワトリに起きることであって、私たちのファームではそんなことは起きないと固く信じていました。

しかし、ある夜にアシ子1羽だけ巣の外で寝ているのを発見してから、その認識が間違っていることに気づきました。
よく見るとアシ子の鶏冠(トサカ)には黒く血のついたあとが。そして片目にも怪我をしたようなあとがあり、とても惨めな姿でした。



アシ子
虐められた翌日(既に隔離病棟にいます)


アシ子
片目を閉じているのがわかります

これはとてもショックな出来事であると同時に良い教訓となりました。
これが私たちのファームで起きた唯一の虐め事件でした。
ストレスのない環境、そして広いスペースが常に "全て" のニワトリが群れの中で健全でいられるというわけではないということを証明しました。


アシ子がこんな状況になっていることを見た瞬間、私たちはこれまでの 哲学 "ニワトリに委ねる" から"早期発見・積極介入"に変更しました。


アシ子にとっての私たちの早期介入は少し遅かったのかもしれません。しかし遅すぎはしませんでした。
すぐに保護を得る資格があると認められ、食事付きのプライベートな専用の部屋を与えられました。またアシ子が遊ぶプライベートの運動場も用意されました。これにより、他のニワトリからも隔離され、そこで寝泊まりすることができるようになったのです。


アシ子
アシ子専用のプライベート部屋


この待遇が数ヶ月続きました。そしてアシ子は完全に回復したのです。幸運にも回復しないと思われていたアシ子の目も治りました。




アシ子
アシ子は他のニワトリの輪に入ることできるようになった様子
(クチバシによる毛づくろいは重要な集団行動です。
他のニワトリと近い距離に立っていられるようになったことは
虐められていたニワトリからすれば大変な進歩です)


週末になると、アシ子は時々餌を特別な時間に1羽で食べています。これはアシ子がこの特別待遇を期待しているからです :D


今現在の9羽のニワトリと6匹のヤギしかいないので、どの子もハッピーで過ごせるように目を配っています。

もしニワトリの数が30羽、50羽、いや100羽いたらどうでしょう。それでも私たちは"一羽ももれなく幸せに"という哲学を持続けたいと思うでしょう。

それにしても大規模の養鶏でどのようにすればそれが可能になるのでしょうか。


群れに戻ることができて、特別な待遇が不要となったアシ子を見ていると私たちは幸せです。


最下位のヒーロー








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